第6回演習 「業界再編と株主 SR(Share Holder Relations)を考える」(Case No.110-2nd Ed.)

2013年2月23日 於:日本外国人特派員協会会議室

概要

株式交換によってなにわ製鉄の完全子会社になるために株主総会の特別決議が必要な千代田鋼鉄と、その株式交換比率が低過ぎるから否決しようと個人株主に訴える投資ファンドのチェリーアセットマネジメントによるプロキシー・ファイト。2007年に東京鋼鐵社と大阪製鐵社の株式交換をめぐり、いちごアセットマネジメント社が個人株主や少数株主の賛同を集めて会社提案を否決した株主総会、いわゆる「いちごの乱」をベースにした、中島塾ならではの迫力あるケーススタディ。
現経営陣が決めた組織再編案を株主はどう判断するのか。

課題

千代田鋼鉄は2月23日開催予定で臨時株主総会を行うこと。
招集通知は方の定めに従って手続きすること。ただし、発送はメール送信にて行う。
本ケースで委任状を勧誘する際には、「金融商品取引法」及び同法に基づく「上場株式の議決権の代理行使の勧誘に関する内閣府令」は適用しない。
株主総会修了後、千代田鋼鉄・チェリーアセットが、それぞれ主催の記者会見を行う。なお、記者会見準備及び会見に関係当事者を参加させるかどうかは各社にて検討する。

臨時株主総会、冒頭から大荒れに

「質問は一人一つまで」「不規則発言、退場を命じる」議長の行き過ぎた議事進行権の行使は、議場の雰囲気を「対決ムード」一色に。あまりにも頑な議長に、一部株主が退席する場面も。
取引先など関連する法人株主の賛成票をベースに、早期からの個別株主訪問やリリースなどで個人株主の多くを取り込めていた千代田鋼鉄であったが、一気に関係は冷却化され、結果は会社原案否決となってしまった。

今回のMIP

強行に議事を進めた千代田鋼鉄社長役の安村氏に決定。

第5回演習 コンプライアンスと実践(Case No.97-4th Ed.)

2013年1月19日 於:日本外国人特派員協会会議室

概要

バス会社が運転手が無免許状態であったことと、他の運転手を「替玉」に使って隠蔽しようとしていたことが、内部からの告発文書により発覚。会社はどのように対応するのか・・・。
モデルとなるのは、2003年の通称「名鉄バス無免許隠蔽事件」。免許更新を行っていなかった営業所の路線バス運転手が運行中に市内で追突事故に遭った。運行主任は直後に無免許を知らされたが運転を続けるよう指示。その後、別の運転手に県警の事情聴取を受けさせた。「替え玉事件」をめぐり同営業所の5人が逮捕・起訴され、無免許運転続行の事実を隠すために虚偽報告した新たな容疑で当時の本社部長と営業所長も逮捕された、という事件。
これをベースにしながら、鉄道事業担当副社長とバス事業担当副社長との社内的な確執や、無免許運転の当事者と「替え玉」を請け負った運転手との背景事情など、立体的かつリアルなケーススタディ。

課題

1月21日に「告発書」に対する対応を決定するための取締役会を行う。
当該営業所の関係者は隣室で待機。いつ、誰から事情聴取を行うかは取締役会の判断。

取締役会、スタート

取締役4名別室待機の岡崎営業所員真相究明と告発書への対応を決定すべく取締役会がスタートした。
内部告発内容を基に、関係者へのヒアリング結果や入手した証拠を検討するが、隠蔽を続けて来たバス事業担当副社長に対してもう一歩詰め切れない。
しかし、最後は隠蔽の事実を認めてバス事業担当副社長が辞意を表し、一気に収束へ向かった。

今回のMIP

証拠の録音を突きつけられても「私ではない」ととぼけ、終始一貫ブレることなく見事に「悪女」に徹した久保氏が満票で受賞。

第4回演習 監査・監督委員会設置会社制度の導入を考える(Case No.115)

2012年11月17日 於:日本外国人特派員協会会議室

概要

当社、キムラコーポレーション株式会社は、音響・映像・OA・車載用・産業用機器等の電子部品、高周波コイルの研究・開発・設計・製造・販売などを業とし、東京証券取引所一部に株式を上場している。
代表執行役CEOの木村治(きむらおさむ。仮名)は創業者の孫にあたる。「進取の精神」にあふれるパワフルな経営者である。もっとも「新しがりや」と評する向きもある。
2003年、商法改正で「委員会設置会社」が制度化されたときも、いち早く採用するよう社内に号令し、2004年6月総会を経て「委員会設置会社」に移行した。
2012年8月1日、会社法制部会が「会社法の見直しに関する要綱案」(案)を公表した。その中心的な事項は「監査・監督委員会設置会社制度」の提案である。
これを見た木村社長は「立法化された暁には、わが社は他社に先駆けて監査・監督委員会設置会社に移行しよう。コーポーレート・ガバナンスの充実に熱心な会社として、さらにイメージアップになるぞ」と言い出した。だが、他の役員たちは「新制度に関する議論が尽くされてからでよいのでは・・」と慎重な構えである。
こうした雰囲気を受けて木村CEOは「社内の関連部署の精鋭を集めて、賛成派、反対派に分かれて、ディベートをして方針を決めればよいではないか。それならフェアだろう」と命令を下した。早速、社内の法務部、総務部、広報部、営業部、財務部から「論客」が選ばれ、「賛成派」、「反対派」二つのチームが作られた。
全取締役及び全執行役が見守る前で、11月17日を期して「ディベート」が行われることになった。
まさに「御前試合」である。
木村CEOから両チームに対して、「くれぐれも、小難しい法律論だけではなく、本当に企業価値を維持するために役立つのか、財務の健全性も保てるのか、消費者から見てどうか、組織運営上はどうか、そして何よりも社会一般、マスコミから見てどうかと、幅広い角度から議論がなされるようにて欲しい。わが社の将来を決するのだから、全力で取り組んでほしい!」と檄が飛んだ。

ディベートチーム編成

混成 チーム(法務部、総務部、広報部、営業部、財務部から選ばれているが、だれがどの部署かは問わないものとする)
【移行賛成派】
【移行反対派】

審判団

当社代表執行役CEOほか、全取締役及び全執行役は、当日参加のOB各位

導入賛成=81点 導入反対=95点 

移行賛成派グループ移行反対派グループ

今回のMIP

反対尋問でのスマッシュヒット、プレゼンの歯切れの良さ。反対派のリーダーを務めた渡邊氏に決定。

第3回演習 株主総会と企業ガバナンス〜総会は企業を変えられるか?〜(Case No.112-3rd Ed.)

2012年10月27-28日 於:アイセミナーハウス

概要

東証2部上場の太陽電気は電気部品の専業メーカー。1945年設立・資本金22億円・従業員160名・売上60億ほどの規模で、昨今は業績が低迷している。2011年3月、大量保有報告書により2005年設立のニコラ電子が30%の大株主になっていたことが判明、2011年10月の定時株主総会では会社提案の取締役承認議案が否決され、ニコラ電子の大森・鈴木が取締役として承認される修正議案が成立、創業家三代目の緒方社長はその座を追われた。ニコラ電子出身の取締役たちは、ニコラ電子と太陽電池製造装置の共同開発を行うために10億円の融資を強引に実施しようとする。
太陽電気はニコラ電子による乗っ取りから会社を守ることができるのか、監査役はどう動くのか、前社長の緒方は・・・。
課題)
10月27日に太陽電気社の定時株主総会を行う。議案については、事業報告と計算書類の報告、剰余金配当の件は省略し、「取締役5名全員任期満了につき5名選任の件」のみとする。

株主開始早々、緊急動議により議長交代。波乱の幕開け。

窪田社長が議長席に立ち、太陽電機の株主総会がスタートした。
株主の受付作業は行われたが、出席株主数と株式数の定足数充足状況の報告がなされるより前に、出席株主から議長交代の動議が提出された(後から考えると、この充足情報は重要な要素であった)。監査役から提起された一連の現経営陣の責任追及を行う訴訟騒動や、一部のメディアによってなされた疑惑報道から、議長に相応しくない、という理由であった。
決議の結果議長不信任が可決され、議長は渡邊専務に交代。突然の戸惑いながらも冷静に議事進行に努めるが、議場は株主によってリードされ、統制が取れない状態に。

第三極も登場!佐藤前社長は返り咲くことができるのか

社長返り咲きを狙うオーナー家出身の前社長佐藤氏は、有力取引先の五代電機武田社長を味方に付けて、支持を訴える。現経営陣を、ニコラ電子との提携案件に異議を唱えた纐纈取締役だけを残し、自身を含めた新候補に入れ替えるという修正動議を提出。
一方で、現在の会社状況を憂いた一般株主の大森氏と緒方氏が、両名を取締役候補にせよという新たな修正案も提出された。
第三極まで含めた3案が並立したところで、「この会社に魅力を感じなくなったので、議決権を売りたい」という株主まで現れ、議場が混乱したためにいったん休憩に。

運命の投票へ

休憩を挟んでいよいよ採決に。
会社提案・佐藤前社長提案・個人株主提案の3案からどれか一つを選択する、という議事進行によって採決した結果、3案のいずれもが過半数に達しないことに。
この議事進行は誤りで、本来はどの案から審議をするかを議場に諮った後、一案ごとに決議を行うべきであった。
まさにシミュレーション・トレーニングとして有益な演習となった。

第2回演習 取締役の責任ー事業展開と取締役の忠実義務ー」(Case No.3 21st Ed.)

2012年9月8日 於:日本外国員特派員協会会議室

中島塾伝統のケース

取締役の競業避止義務違反が裁判で争われた「山崎製パン事件」を母体にした、戦略法務講座中島塾で最も著名なケーススタディ。1期から今期22期まで全期において取り上げられているため、卒業生含めて全員が共通体験を有することとなり、中島塾受講者の一体感醸成に効果を発揮している。

概要

第二次世界大戦後の動乱期に、文字通り裸一貫独力で市川製パン社を創業し、事業拡大をして来た現社長の纐纈。ワンマン経営者で、社内の反対にもかかわらず千葉市の川口パンを個人で買収り、関西進出も個人でリスクをとって強引に進めていった。
小麦粉を納入していた東洋製粉社は、纐纈が病魔に倒れたときに取締役の派遣を依頼されたことを契機に市川製パン社の系列化を画策する。纐纈社長の実弟である副社長の渡辺との確執も利用し、突然纐纈社長の過去の独断経営行為を会社法違反に該当するとの問題提起から戦いの幕は開いた。

課題)
時代を昭和51年と仮定して、9月8日の予定で臨時取締役会を開催する。議題は社長の法的責任の究明と措置の決定である。ただし、法律は全て現行会社法など(平成24年9月現在)を適用するものとし、過去も同様の法律が施行されていたものと設定する。

取締役会、スタート

纐纈社長の自宅で、取締役会はスタートした。
取締役たちを睥睨し、時には声を荒げて恫喝する纐纈社長の前に、責任追及派は責め切れない。
結果的には橋本副社長が調整役に回った形で、自身が代表権を持ち、社長は平取となることで終了。

今回のMIP

創業社長役の纐纈氏に決定。

第1回演習 非常時のリスク対応(Case No.114)

2012年7月21日 於:日本外国人特派員協会会議室

概要

日比谷食品株式会社は東証一部上場で、調味料・冷凍食品・健康食品まで幅広く食品の製造販売事業を展開している。人気商品は「まるまる餃子」「まるまるシューマイ」「まるまる中華まん」で、これらの製造は全て100%子会社の「多摩川食品株式会社」に委託していて、商品は「製造元:多摩川食品 販売元:日比谷食品」という表示にて販売されている。
7月21日午前10時、製造本部長宛に食品事故と思われる報告が上がって来た。チェーンストア・フレッシュフーズ日比谷店で、前日に「まるまる餃子」を購入して食した客の子供が呼吸困難となり救急車で搬送された、母親によれば当該子供は卵アレルギーを持っておりその症状ではないかと思われる、というもの。
日比谷食品からの連絡を受けた多摩川食品の幹部は急ぎ日比谷食品に向かい、到着した。

課題)
・緊急対策会議を行い、必要な情報収集とポジションペーパーとリリースを作成、記者会見を行う。

精緻なケーススタディをロールプレイングで仮想体験する「中島メソッド」、スタート

多摩川食品チーム日比谷食品チーム7名の参加者には、それぞれ個別の役割・ミッションと情報が設定されているので、まずは与えられた個別の資料を読み込むことから始まる。自分自身の戦略目標と組織の戦略目標を設定しながら、それを達成するための戦術を検討していく。
日比谷食品チームは、代表取締役社長・取締役営業本部長・取締役製造本部長・取締役広報部長の4名、多摩川食品チームは代表取締役社長(日比谷食品から3年前に転籍)・取締役製造部長(日比谷食品から1年前に転籍)・非常勤取締役(日比谷食品営業本部担当者兼務)の3名。

緊急対策会議で情報収集開始

原因究明、状況把握、対応策、広報・・・多岐にわたる論点を限られた時間の中で優先順位を付けながら整理をして行くことは至難の業。しかも、親会社と子会社という立場と力関係が微妙な温度差を生じさせる「本音」と「タテマエ」の世界が交錯する。

記者会見

「被害者のところに行ったのか」「具体的な改善策を示せ」「他の製品が問題ないという保証はあるのか」・・・記者とOBから厳しい質問の連続。
社内会議のホワイトボードがそのままになっていたり、会場設営などにも課題が残ったものの、中島塾の初洗礼、お疲れさまでした。

今回のMIP

取締役広報部長として、対策会議から会見まで冷静なリーダーシップを発揮された、安村氏に決定。