第6回演習 業界再編と株主との対話〜SR(Share Holder Relations)を考える〜(Case No.110 4th Ed.)

2017年2月25日 於:日本外国人特派員協会会議室

概要

株式交換によってなにわ製鉄の完全子会社になるために株主総会の特別決議が必要な千代田鋼鉄と、その株式交換比率が低過ぎると現経営陣を批判し取締役に参加しようとする投資ファンドのチェリーアセットマネジメント。2007年に東京鋼鐵社と大阪製鐵社の株式交換をめぐり、いちごアセットマネジメント社が個人株主や少数株主の賛同を集めて会社提案を否決した株主総会、いわゆる「いちごの乱」をベースにした、中島塾ならではの迫力あるケーススタディ。
現経営陣が決めた組織再編案を株主はどう判断するのか。

課題

千代田鋼鉄は2月25日開催予定で臨時株主総会を行うこと。
招集通知は方の定めに従って手続きすること。ただし、発送はメール送信にて行う。
本ケースで委任状を勧誘する際には、「金融商品取引法」及び同法に基づく「上場株式の議決権の代理行使の勧誘に関する内閣府令」は適用しない。
株主総会修了後、千代田鋼鉄・チェリーアセットが、それぞれ主催の記者会見を行う。なお、記者会見準備及び会見に関係当事者を参加させるかどうかは各社にて検討する。

僅差で会社提案が承認。しかし、直前の取締役辞任など株主の懸念は払拭できず。

マスコミを利用した世論形成によって一般株主の支持を獲得しつつあった会社側であったが、株主総会当日に河原取締役が辞任するという事件が。さらに株主総会に株主として出席した河原元取締役の発言を受け、総会は混沌としたムードにつつまれる。一方のチェリーアセット側の説明ももう一つ説得力が感じられない。不透明感が払拭できない中での採決は、株式交換による合併についての会社提案は可決され、チェリーアセット側が提出していた取締役2名選任の株主提案議案は否決された。

今回のMIP

粘り強く可決を勝ち取った社長役の星野氏

第5回演習 コンプライアンスと実践(Case No.97 8thEd.)

2017年1月21日 於:日本外国人特派員協会会議室

概要

バス会社が、運転手が無免許状態であったことと、他の運転手を「替玉」に使って隠蔽しようとしていたことが、内部からの告発文書により発覚。会社はどのように対応するのか・・・。
モデルとなるのは、2003年の通称「名鉄バス無免許隠蔽事件」。免許更新を行っていなかった営業所の路線バス運転手が運行中に市内で追突事故に遭った。運行主任は直後に無免許を知らされたが運転を続けるよう指示。その後、別の運転手に県警の事情聴取を受けさせた。「替え玉事件」をめぐり同営業所の5人が逮捕・起訴され、無免許運転続行の事実を隠すために虚偽報告した新たな容疑で当時の本社部長と営業所長も逮捕された、という事件。
これをベースにしながら、鉄道事業担当副社長とバス事業担当副社長との社内的な確執や、無免許運転の当事者と「替え玉」を請け負った運転手との背景事情など、立体的かつリアルなケーススタディ。

課題

1月21日に安全管理体制を議題とした取締役会を行う。
当日は、定例取締役会終了後、全社集会が予定されているため、主だった営業所の従業員も本社に来社している。

取締役会スタート

今回のMIP

最後まで「自分だけというのは嫌だ」と免許証の提示を拒否し続けた山本氏

第4回演習 ディベート〜取締役会無記名投票について〜(Case No.120)

2016年11月26日 於:日本外国人特派員協会会議室

参考事例

2016 年 4 月 7 日、午前 9 時半から流通グループ HD の取締役会が開催された。同取締役会では、 会長兼 CEO が提案した役員人事案が否決された。 決議の状況については、次のとおり報じられている。 「通常なら挙手で行う採決が無記名投票に切り替えられた。社外取締役の提案だった。『挙手では 会長に遠慮して本音が出ない』との理由だ。事務方が投票箱を開けた。賛成7、反対6、白票2。 賛成が反対を上回ったが、過半数に届かず、案は否決された」(2016.4.20 読売新聞)

論題

株主としては、妥当とする「賛成派」、不当とする「反対派」に分かれてディベートを行う。
議論に当たっては、会社法の趣旨、コーポレートガバナンスの理想、コーポレートガバナンス・コードの趣旨、株主・投資家の立場、秘密投票の歴史、委任の本質、その他多様かつ重要な論点に触れながら、議論を行うこと。

反対派、206対201の僅差で勝利!

賛成派・反対派ともに反対尋問対策にも注力し、内容の充実した討議となった。

今回のMIP

熱意あふれるプレゼンで反対派チームに流れを呼び込んだ出ロ氏

第3回演習 株主総会と企業ガバナンス〜総会は企業を変えられるか?〜(Case No.112-7th Ed.)

2016年10月22-13日 於:アイセミナーハウス

概要

東証2部上場の太陽電気は電気部品の専業メーカー。1945年設立・資本金22億円・従業員160名・売上60億ほどの規模で、昨今は業績が低迷している。2015年3月、大量保有報告書により2007年設立のニコラ電子が15%の大株主になっていたことが判明、2015年10月の定時株主総会では会社提案の取締役承認議案が否決され、ニコラ電子の上野・宇佐美・出ロと従来からの望月・河原が取締役として承認される修正議案が成立、創業家三代目の長谷川社長はその座を追われた。ニコラ電子出身の取締役たちは、ニコラ電子と太陽電池製造装置の共同開発を行うために巨額の出金を目論むが。。。
太陽電気はニコラ電子による乗っ取りから会社を守ることができるのか、監査役はどう動くのか、前社長の長谷川は・・・。
課題)
10月22日に太陽電気社の定時株主総会を行う。議案については、事業報告と計算書類の報告、剰余金配当の件は省略し、「取締役5名全員任期満了につき5名選任の件」のみとする。

総会前日の望月取締役辞任。冒頭から議長交代。荒れた総会も見事なプレゼンで長谷川社長が返り咲きを果たす

総会の1時間前からは、長谷川前社長が一般株主を集めて説明会を開催。総会は冒頭から議長不信任動議が可決されて議長交代となり、荒れ模様でスタート。
現任の上野社長も淡々と冷静に応対するが、主要取引先の五代電機を味方につけた長谷川前社長のビジネスプランが支持され、長谷川元社長提案の修正議案が可決、見事に返り咲き。

今回のMIP

一般株主、取引先、従業員の支持を取り付け、社長に復帰した長谷川氏。

第2回演習 取締役の責任ー事業展開と取締役の忠実義務ー(Case No.3 25th Ed.)

2016年9月10日 於:日本外国人特派員協会会議室

中島塾伝統のケース

取締役の競業避止義務違反が裁判で争われた「山崎製パン事件」を母体にした、戦略法務講座中島塾で最も著名なケーススタディ。1期から今期26期まで全期において取り上げられているため、卒業生含めて全員が共通体験を有することとなり、中島塾受講者の一体感醸成に効果を発揮している。

概要

第二次世界大戦後の動乱期に、文字通り裸一貫独力で市川製パン社を創業し、事業拡大をして来た現社長の出口。ワンマン経営者で、社内の反対にもかかわらず千葉市の川口パンを個人で買収り、関西進出も個人でリスクをとって強引に進めていった。
小麦粉を納入していた東洋製粉社は、出口が病に倒れたときに取締役の派遣を依頼されたことを契機に市川製パン社の系列化を画策する。出口社長の実弟である副社長の鈴木との確執も利用し、突然出口社長の過去の独断経営行為を会社法違反に該当するとの問題提起から戦いの幕は開いた。

課題)
時代を昭和51年と仮定して、9月10日の予定で臨時取締役会を開催する。議題は社長の法的責任の究明と措置の決定である。ただし、法律は全て現行会社法など(2016年9月現在)を適用するものとし、過去も同様の法律が施行されていたものと設定する。

堂々巡りの責任論。

冒頭、社長の法的責任議案と中期経営計画議案のどちらから審議すべきかをめぐって社長派と副社長派とで小競り合いがあったが、「社長に事故ある時、に該当して議長を務めている副社長の私が、議事進行を決することができるため、まず出口社長の法的責任追及から審議する」と宣言、議事スタート。
激昂して机を叩く監査役、それをたしなめながら「サラリーマン社長では産業も社会も発展しない」と独自の経営理念を主張する社長。やがて議論は膠着状態に。
最終的には出口社長が代表権の無い会長職とし、鈴木副社長が社長昇格する案が賛成多数で可決された。

荒れる記者会見

用意されたプレスリリースに沿って社長の会社法令違反事案を説明し、さらに中期経営計画の発表で新体制における事業環境の堅調さをアピールしたい新経営陣。しかし、社長は「解任」なのか「解職」なのか、誰が当該人事議案に賛成したのか、などの質問が相次ぎ、会社側が主導権をとることができない。

今回のMIP

社長役を熱演した出口氏。

第1回演習 非常時のリスク対応(Case No.114 5th Ed.)

2016年7月30日 於:日本外国人特派員協会会議室

概要

日比谷食品株式会社は東証二部上場で、調味料・冷凍食品・健康食品まで幅広く食品の製造販売事業を展開している。人気商品は「まるまる餃子」「まるまるシューマイ」で、これらの製造は全て100%子会社の「多摩川食品株式会社」に委託していて、商品は「製造元:多摩川食品 販売元:日比谷食品」という表示にて販売されている。
7月30日12時30分、製造本部長宛に食品事故と思われる報告が上がって来た。チェーンストア・フレッシュフーズ日比谷店で、前日に「まるまる餃子」を購入して食した客の子供が呼吸困難となり救急車で搬送された、母親によれば当該子供は卵アレルギーを持っておりその症状ではないかと思われる、というもの。
日比谷食品から多摩川食品の幹部にも情報は伝わったが。。。
課題)
・ケースで設定された各自の「役割設定」と「指示」に従って、リスク管理上の対応方針を検討・決定し、その後記者会見を行う。

精緻なケーススタディをロールプレイングで仮想体験する「中島メソッド」、スタート

日比谷食品チーム多摩川食品チーム11名の受講生には、それぞれ個別の役割・ミッションと情報が設定されているので、まずは与えられた個別の資料を読み込むことから始まる。自分自身の戦略目標と組織の戦略目標を設定しながら、それを達成するための戦術を検討していく。
日比谷食品チームは、代表取締役社長・取締役営業本部長・取締役製造本部長・取締役広報部長・取締役法務部長・監査役の6名、多摩川食品チームは、代表取締役社長(日比谷食品出身)・取締役総務部長(多摩川食品生え抜き)・取締役製造部長(元日比谷食品製造本部次長)・取締役製造部副部長(元日比谷食品製造本部員)・監査役(多摩川食品生え抜き)の5名。

緊急対策会議で情報収集開始

合同会議スタート子会社の多摩川食品幹部も親会社の日比谷食品に合流し、一緒に状況把握と対策検討開始。効率良い情報収集と分析はハードルが高い。
ここでは、親会社と子会社という立場と力関係、各自が職責上有する立場(営業部門、広報・法務のコンプライアンスの観点など)や利害関係(特に多摩川食品の幹部社員には個人的な背景事情が設定されている)、対策構築にも微妙な温度差が生じ、議論はなかなかまとまらない。

記者会見

会見スタート。「命に関わる問題であるという認識があるのか」「原因が特定できていないということは、さらに新たな被害も発生するのでは」「何のための会見なのか」・・・記者とから厳しい質問の連続。

今回のMIP

日比谷食品チームにおいては情報整理を的確に行うなど会議をリードし、取締役広報部長として会見を積極的に仕切った星野氏が、26期一人目のMIP賞獲得。