第6回演習 業界再編と株主との対話〜SR(Share Holder Relations)を考える〜(Case No.110 5th Ed.)

2018年2月24日 於:日本外国人特派員協会会議室

概要

株式交換によってなにわ製鉄の完全子会社になるために株主総会の特別決議が必要な千代田鋼鉄と、その株式交換比率が低過ぎると現経営陣を批判し取締役に参加しようとする投資ファンドのチェリーアセットマネジメント。2007年に東京鋼鐵社と大阪製鐵社の株式交換をめぐり、いちごアセットマネジメント社が個人株主や少数株主の賛同を集めて会社提案を否決した株主総会、いわゆる「いちごの乱」をベースにした、中島塾ならではの迫力あるケーススタディ。
現経営陣が決めた組織再編案を株主はどう判断するのか。

課題

千代田鋼鉄は2月24日開催予定で臨時株主総会を行うこと。
招集通知は方の定めに従って手続きすること。ただし、発送はメール送信にて行う。
本ケースで委任状を勧誘する際には、「金融商品取引法」及び同法に基づく「上場株式の議決権の代理行使の勧誘に関する内閣府令」は適用しない。
株主総会修了後、千代田鋼鉄・チェリーアセットが、それぞれ主催の記者会見を行う。なお、記者会見準備及び会見に関係当事者を参加させるかどうかは各社にて検討する。

会社原案・株主提案ともにが否決。


開始早々に議長から株主1名に退場命令が発令され、荒れ模様で総会がスタート。チェリー側も攻め手に欠けるのか迫力がない。一方会社側の説明にも説得力がなく、結果的には会社側からの株式交換承認議案は過半数を得られず否決、チェリー側の取締役選任議案も否決された。

今回のMIP

粘り強く、淡々と議事を進行した社長役の諌山氏

第5回演習 ディベート〜法令・契約・自主基準〜(Case No.122)

2018年1月20日 於:日本外国人特派員協会会議室

概要

中島塾恒例のディベート演習。今回は、当初要求された品質基準を満たさないものの不良品とまでは言えず、納期や数量に鑑みると誤差の範囲として扱うことが有益といった場合に、顧客の許可を得て納品するという、業界の一般的な商慣行とされている「特採(トクサイ)」をテーマとし、架空のケースにおいて検討する。

課題

日比谷カーグ社は部品製造を委託したチヨダイカスト社から下記の連絡を受けた。「特別にご採用」をするべきか、しないべきか。
貴社から製造委託を受けておりますブラケット(貴社整理番号 NJK27)ですが、2017 12 30 日、1 万セットの製造を完了し、出荷検査をいたしましたところ、耐荷重 6kgfであることが判明しました。当社の技術で 8kgfの物が十分に作れると思っていただけに残念です。が、当該セットのダイカスト部品はJIS企画には合致しております。また、貴社のホームページを拝見しましたが、「耐荷重10kg」と表示しておられます。従いまして、二つ合わせて耐荷重12kgfでも十分に実用に耐えられるはずですので、ぜひとも、特別にご採用いただきたく、平にお願いします。」

賛成派8:反対派10 反対派勝利



今回のMIP

明快で説得力あるプレゼンが高評価であった諌山氏

第4回演習 コンプライアンスと実践(Case No.97 9thEd.)

2017年11月25日 於:日本外国人特派員協会会議室

概要

バス会社が、運転手が無免許状態であったことと、他の運転手を「替玉」に使って隠蔽しようとしていたことが、内部からの告発文書により発覚。会社はどのように対応するのか・・・。
モデルとなるのは、2003年の通称「名鉄バス無免許隠蔽事件」。免許更新を行っていなかった営業所の路線バス運転手が運行中に市内で追突事故に遭った。運行主任は直後に無免許を知らされたが運転を続けるよう指示。その後、別の運転手に県警の事情聴取を受けさせた。「替え玉事件」をめぐり同営業所の5人が逮捕・起訴され、無免許運転続行の事実を隠すために虚偽報告した新たな容疑で当時の本社部長と営業所長も逮捕された、という事件。
これをベースにしながら、鉄道事業担当副社長とバス事業担当副社長との社内的な確執や、無免許運転の当事者と「替え玉」を請け負った運転手との背景事情など、立体的かつリアルなケーススタディ。

課題

11月25日に安全管理体制を議題とした取締役会を行う。
当日は、定例取締役会終了後、全社集会が予定されているため、主だった営業所の従業員も本社に来社している。

取締役会スタート

今回のMIP

詳細な情報収集力と冷静な議事運営に徹した、岡部社長。

第3回演習 株主総会と企業ガバナンス〜総会は企業を変えられるか?〜(Case No.112-8th Ed.)

2017年10月21-22日 於:アイセミナーハウス

概要

東証2部上場の太陽電気は電気部品の専業メーカー。1945年設立・資本金22億円・従業員160名・売上60億ほどの規模で、昨今は業績が低迷している。2016年3月、大量保有報告書により2011年設立のニコラ電子が15%の大株主になっていたことが判明、2016年10月の定時株主総会では会社提案の取締役承認議案が否決され、ニコラ電子の田辺・諌山と従来からの岡部・山田が取締役として承認される修正議案が成立、創業家三代目の小堀社長はその座を追われた。ニコラ電子出身の取締役たちは、ニコラ電子と太陽電池製造装置の共同開発を行うために巨額の出金を目論むが。。。
太陽電気はニコラ電子による乗っ取りから会社を守ることができるのか、監査役はどう動くのか、前社長の小堀は・・・。
課題)
10月21日に太陽電気社の定時株主総会を行う。議案については、事業報告と計算書類の報告、剰余金配当の件は省略し、「取締役4名全員任期満了につき4名選任の件」のみとする。

ブレない議事運営でニコラ側が見事に押し切り。田辺社長が再任に。

総会では田辺社長の議長適格性をめぐって不信任動議・議長交代動議などが提出されるが、淡々と議事を捌く田辺社長。
小堀前社長の出遅れ感否めず、一般株主票を取り込むことができずに返り咲きは果たせなかった。

今回のMIP

見事に悪役に徹し、再任を果たした田辺氏。電磁開閉器の模型を使ったプレゼンは秀逸。

第2回演習 取締役の責任ー事業展開と取締役の忠実義務ー(Case No.3 26th Ed.)

2017年9月9日 於:日本外国人特派員協会会議室

中島塾伝統のケース

取締役の競業避止義務違反が裁判で争われた「山崎製パン事件」を母体にした、戦略法務講座中島塾で最も著名なケーススタディ。1期から今期27期まで全期において取り上げられているため、卒業生含めて全員が共通体験を有することとなり、中島塾受講者の一体感醸成に効果を発揮している。

概要

第二次世界大戦後の動乱期に、文字通り裸一貫独力で市川製パン社を創業し、事業拡大をして来た現社長の山田。ワンマン経営者で、社内の反対にもかかわらず千葉市の川口パンを個人で買収り、関西進出も個人でリスクをとって強引に進めていった。
小麦粉を納入していた東洋製粉社は、山田が病に倒れたときに取締役の派遣を依頼されたことを契機に市川製パン社の系列化を画策する。山田社長の実弟である副社長の高原との確執も利用し、突然山田社長の過去の独断経営行為を会社法違反に該当するとの問題提起から戦いの幕は開いた。

課題)
時代を昭和51年と仮定して、9月9日の予定で臨時取締役会を開催する。議題は社長の法的責任の究明と措置の決定である。ただし、法律は全て現行会社法など(2017年9月現在)を適用するものとし、過去も同様の法律が施行されていたものと設定する。

対立軸が不明瞭な展開

高原副社長を擁する東洋製粉側と現社長派との激しい攻防になるかと思いきや、対立構造が今ひとつはっきりしないままに議論が続く。
「関係者からの参考意見聴取」として従業員組合、ストア会、明るい経営誌から代表者が招聘されて意見陳述を行う手法も用いられた。
最終的には出口社長が代表権の無い会長職とし、鈴木副社長が社長昇格する案が賛成多数で可決された。

「振り返り会」での「種明かし」で一同納得

演習終了後に、現役生と参加OBとで、各自の関わり方や戦略・戦術を開示しながら演習全体をレビューする「振り返り会」が行われた。そこで明らかにされた、ある「念書」の存在とその内容には、知らなかった大多数の参加者が驚くとともに、対立軸が不鮮明なままの展開について大いに納得することとなった。
取締役会の進行シナリオも複数準備されていたこと、それぞれの展開に応じたプレスリリースも用意されていたことなど、充実した演習となっていた。

今回のMIP

副社長役を「したたかに」演じきった高原氏。

第1回演習 非常時のリスク対応(Case No.114 6th Ed.)

2017年7月15日 於:日本外国人特派員協会会議室

概要

日比谷食品株式会社は東証二部上場で、調味料・冷凍食品・健康食品まで幅広く食品の製造販売事業を展開している。人気商品は「まるまる餃子」「まるまるシューマイ」で、これらの製造は全て100%子会社の「多摩川食品株式会社」に委託していて、商品は「製造元:多摩川食品 販売元:日比谷食品」という表示にて販売されている。
7月15日12時30分、製造本部長宛に食品事故と思われる報告が上がって来た。チェーンストア・フレッシュフーズ日比谷店で、前日に「まるまる餃子」を購入して食した客の子供が呼吸困難となり救急車で搬送された、母親によれば当該子供は卵アレルギーを持っておりその症状ではないかと思われる、というもの。
日比谷食品から多摩川食品の幹部にも情報は伝わったが。。。
課題)
・ケースで設定された各自の「役割設定」と「指示」に従って、リスク管理上の対応方針を検討・決定し、その後記者会見を行う。

精緻なケーススタディをロールプレイングで仮想体験する「中島メソッド」、スタート

多摩川食品チーム日比谷食品チーム7名の受講生には、それぞれ個別の役割・ミッションと情報が設定されているので、まずは与えられた個別の資料を読み込むことから始まる。自分自身の戦略目標と組織の戦略目標を設定しながら、それを達成するための戦術を検討していく。
日比谷食品チームは、代表取締役社長・取締役営業本部長・取締役製造本部長・取締役広報部長の4名、多摩川食品チームは、代表取締役社長(日比谷食品出身)・取締役総務部長(多摩川食品生え抜き)・取締役製造部長(元日比谷食品製造本部次長)の3名。

緊急対策会議で情報収集開始

合同会議スタート子会社の多摩川食品幹部も親会社の日比谷食品に合流し、一緒に状況把握と対策検討開始。効率良い情報収集と分析はハードルが高い。
ここでは、親会社と子会社という立場と力関係、各自が職責上有する立場(営業部門の事情、広報リスクの観点など)や利害関係(個人的感情の背景事情が設定されている)、対策構築にも微妙な温度差が生じ、議論はなかなかまとまらない。

記者会見

会見スタート。「なぜ回収しないのか」「店の売り場で注意喚起をするというが、どのように行うのか」「命に関わる問題であるという認識があるのか」「何のための会見なのか」・・・記者からは厳しい質問が続く。