第6回演習 「決定はなされたかーインサイダー回避のマネジメントー」(Case No.85 4thEd.)

2012年2月25日 於:外国人記者クラブ

概要

検察チーム弁護側チーム
M&Aのトップロイヤーである栗原弁護士は、相手を説得することについては自他ともに認める能力を持ち、さまざまなM&A案件の交渉をまとめてきた実績を持つ。栗原弁護士が顧問と監査役をつとめている消費者金融のモニネット社が関与するM&A案件は紆余曲折の末に大詰めを迎えていた。キーパーソンは、当該M&Aのスキームに強硬に反対して来たコレチカ社の塚田社長。彼の「了解」の一言で、この案件はまとまる。コレチカ社以外の関与者全員の意を受けて、直接一対一で塚田社長を説得する栗原弁護士。会談の翌日、これまで取りつく島も無かった塚田社長から「もう少し考えてみますよ」の一言を引き出した栗原弁護士は、本件M&Aが成功するものと確信し、知人名義で該当社の株式を購入した。栗原・塚田の直接会談から3日後、鶴岡八幡宮のご託宣によって当該M&A推進を決意した塚田社長は関係者に了承の旨を伝え、当該案件は一気にまとまることとなった。
栗原弁護士から当該株式の買い付けを依頼された証券会社営業マンの関口は、栗原弁護士をインサイダー取引であるとして東京地検に告発、東京地検特捜部は栗原弁護士を証券取引法違反の罪で東京地裁に在宅起訴した。
モデルとなるのは、最高裁まで争われた日本織物加工社のインサイダー取引事件。インサイダー情報における「決定事実」とは、どの段階になれば「決定」と言えるのだろうか。

課題

時代を1996年と設定し、2月25日を公判日として、栗原弁護士の刑事責任について、裁判員裁判制で模擬裁判を行う。

証人陣

栗原弁護士の「知人」で、株式購入の名義社である、元モデルの高瀬氏告発者である、栗原弁護士を担当していた証券会社営業マンの関口氏M&Aの対象会社の社長、森田氏(20期)は、東京染工からの派遣。

同じくM&A対象会社の常務取締役千葉氏(14期)M&Aの当事会社の社長、清水氏(20期)本件M&Aの「買い手」であるモニネット社社長の青木氏(15期)

コレチカ社社長の塚田氏(5期)は、「決定は高度な経営判断」と主張。被告人の栗原弁護士、被告人弁論は極めて秀逸。さすが。

結果

弁護側、「不当判決」として記者会見裁判員の評決は別れ、僅差で「有罪」。

MIP

勝利した検察チームで、鋭い尋問を行った鳥羽氏が第4回に続けて受賞



第5回演習 コンプライアンスと実践」(Case No.97 3rdEd.)

2012年1月21日 於:外国人記者クラブ

概要

バス会社が運転手が無免許状態であったことと、他の運転手を「替玉」に使って隠蔽しようとしていたことが、内部からの告発文書により発覚。会社はどのように対応するのか・・・。
モデルとなるのは、2003年の通称「名鉄バス無免許隠蔽事件」。免許更新を行っていなかった営業所の路線バス運転手が運行中に市内で追突事故に遭った。運行主任は直後に無免許を知らされたが運転を続けるよう指示。その後、別の運転手に県警の事情聴取を受けさせた。「替え玉事件」をめぐり同営業所の5人が逮捕・起訴され、無免許運転続行の事実を隠すために虚偽報告した新たな容疑で当時の本社部長と営業所長も逮捕された、という事件。
これをベースにしながら、鉄道事業担当副社長とバス事業担当副社長との社内的な確執や、無免許運転の当事者と「替え玉」を請け負った運転手との背景事情など、立体的かつリアルなケーススタディ。

課題

1月21日に「告発書」に対する対応を決定するための取締役会を行う。
当該営業所の関係者は隣室で待機。いつ、誰から事情聴取を行うかは取締役会の判断。

取締役会、スタート

各当事者にどの順番でヒアリングを行うかを討議別室で呼び出しを待つ、岡崎営業所の面々。真相究明と告発書への対応を決定すべく取締役会がスタートした。
会社を二分するバス事業と鉄道事業。それぞれを担当する副社長の覇権争いも絡み、虚々実々の駆け引きが始まった。

手袋に誓って。。。

「事実無根、替え玉などあり得ない。現場の大変さを経営陣は知っているのか」と逆ギレする岡崎営業所の緒方所長。
しかし、堀内運転手は前日に真実を新行内社長に告白していた。さらに「運転手の誇り、この手袋に誓って真実をお話しします」と伊藤運転手が告解を始める。
隠蔽工作は失敗。そこに陸運局の担当者のボヤキを聞きつけたマスコミから取材依頼が。

記者会見

「無免許」「告発書」「替え玉」「隠蔽」・・・会社側から発せられるショッキングなキーワードに、マスコミの厳しい追求が続く。

MIP

「手袋への誓い」と会場を泣かせた伊藤氏「盗人猛々しい」ほどに悪役に徹した大森氏


第4回演習 ディベートー特許制度ー」(Case No.113)

2011年12月3日 於:外国人記者クラブ

概要

課題)
我々は、「先発明主義」と「先願主義」のいずれを支持すべきか。
先発明主義派、先願主義派に分かれてディベートを行う。

概要)
1.ディベートとは、人を説得する「技術」を獲得するために、論理力、資料の豊富さ、表現力、即応力などを訓練する演習方法である。従って、自分の個人的見解がどうであるかとは全く関係なく、与えられた立場を説得的に主張すること。

2.先発明主義派・先願主義派それぞれ、各立論に争点をふりわけ、主張を明確にし、審判を説得するに足る理由付と資料を示していただきたい(一回も発言しない塾生がいないように)。

3.資料は、説得力のあるものなら何でもよい。「一般論」としては、信用力のあるもの、新しいものが望ましい。
*審判に見てもらい、理解してもらわなければ意味がない。念のため。

4.「反対尋問」は、自分の反論の準備としてなすもので、現になされた相手方の主張の矛盾点をついたり、証拠の弱い点を引出したり、自分の有利な議論を相手から引出したりするため事実関係(証拠の強弱、資料の出所)などについて簡潔に質問する。

  • Ex.「この資料は、どこから入手されたのですか?」(出所の怪しい資料)

   *ディベートのなかで最も大切な部分といえる。なお、自分の意見を主張するためのものではない。
   *反対尋問は、しなくてもよい。相手の主張が根拠に乏しく、自滅していくことは明らかなときなど。法律関係者の世界では「反対尋問しないのは、最高の反対尋問」という格言がある。

5.反対尋問に対して逆質問することは許されない。

6.いずれの場合も、具体的実例を重視すること。

先発明主義チーム

特許権の根本思想はジョン・ロックの「自然権」にあり、と説き出した先発明主義チーム。後半は具体的な事例を効果的に引用する場面もあったが、惜敗。

先願主義チーム

特許権を「発明者の権利」よりも「産業発展の制度」という観点で、制度の安定運用のために先願主義が優れていると主張する先願主義チーム。

今回のMIP

鋭い反対尋問でチームの勝利に貢献した鳥羽氏が今回のMIPに。

第3回演習 取締役の責任ー事業展開と取締役の忠実義務ー」(Case No.3 20thEd.)

2011年10月22日〜23日 於:アイセミナーハウス

概要

取締役の競業避止義務違反が裁判で争われた「山崎製パン事件」を母体にした、戦略法務講座中島塾で最も著名なケーススタディ。1期から今期21期まで全期において取り上げられているため、卒業生含めて全員が共通体験を有することとなり、中島塾受講者の一体感醸成に効果を発揮している。

概要)
第二次世界大戦後の動乱期に、文字通り裸一貫独力で市川製パン社を創業し、事業拡大をして来た現社長の堀内。ワンマン経営者で、社内の反対にもかかわらず千葉市の川口パンを個人で買収り、関西進出も個人でリスクをとって強引に進めていった。
小麦粉を納入していた東洋製粉社は、堀内が病魔に倒れたときに取締役の派遣を依頼されたことを契機に市川製パン社の系列化を画策する。堀内社長の実弟である副社長の鈴木との確執も利用し、突然堀内社長の過去の独断経営行為を会社法違反に該当するとの問題提起から戦いの幕は開いた。

課題)
時代を昭和51年と仮定して、10月22日の予定で臨時取締役会を開催する。議題は社長の法的責任の究明と措置の決定である。ただし、法律は全て現行会社法(平成23年10月現在)を適用するものとし、過去も同様の法律が施行されていたものと設定する。

臨時取締役会、スタート

会日の5日前に劇的な「和解」に至った堀内社長・鈴木副社長兄弟。東洋製粉派遣の鳥羽取締役・伊藤監査役は圧倒的不利の形勢下におかれてしまった。川口パン社の買収、関西イチカワの設立と運営が、競業避止義務・忠実義務に違反するのかしないのか。監査役のからは正反対の意見書が提出され、兄弟が和解してしまった以上、東洋製粉社出身の二人はよりどころが無い。

雑誌記事と怪文書から堀内社長の責任論に転換

社長派の圧勝かと思われたときに、前日発売の「噂の真実」掲出記事と、取締役会会場の外で何者かが配布しているというビラを従業員が報告に来た。
ここから堀内社長と清水会・右翼団体との交際に批判が集中、堀内社長は引責辞任することとなった。

銀行団の圧力

取締役会終了後、事態を心配したメインバンクはじめ銀行団と大株主の金融機関が揃って会談の申し入れをしてきた。銀行からは、内紛のゴタゴタや社長の突然の辞任といった信用不安から、金利の上積みと取締役の派遣受け入れの提案がなされた。

今回のMIP

東洋製粉社に取り込まれず、市川製パンにとどまった副社長役の鈴木氏が今回のMIPに。

第2回演習 株主総会と企業ガバナンス〜総会は企業を変えられるか?〜(Case No.112-2nd Ed.)

2011年7月30日 於:日本外国人特派員協会会議室

概要

東証2部上場の太陽電気は電気部品の専業メーカー。1945年設立・資本金22億円・従業員160名・売上60億ほどの規模で、昨今は業績が低迷している。2010年3月、大量保有報告書により2005年設立のニコラ電子が30%の大株主になっていたことが判明、2010年9月の定時株主総会では会社提案の取締役承認議案が否決され、ニコラ電子の大森・鈴木が取締役として承認される修正議案が成立、創業家三代目の緒方社長はその座を追われた。ニコラ電子出身の取締役たちは、ニコラ電子と太陽電池製造装置の共同開発を行うために10億円の融資を強引に実施しようとする。
太陽電気はニコラ電子による乗っ取りから会社を守ることができるのか、監査役はどう動くのか、前社長の緒方は・・・。
課題)
9月10日に太陽電気社の定時株主総会を行う。議案については、事業報告と計算書類の報告、剰余金配当の件は省略し、「取締役5名全員任期満了につき5名選任の件」のみとする。

株主総会、スタート

株主総会3日前の臨時取締役会で、ニコラ電子社との技術提携・10億円融資を決議するために、ニコラ電子社の取締役を兼務し同社100%株主の大森氏が太陽電機社代表取締役を辞任、ニコラ電子社出身の鈴木取締役が代表取締役となって当該議案を可決した、という経緯のため、株主総会は現社長の鈴木氏が議長となってスタートした。

追いつめる前社長、逃げる現経営陣

社長返り咲きを狙う、オーナー家出身の前社長緒方氏が経営陣を追求するが、ニコラ電子出身の現経営陣は「取締役選任議案は、誰を選ぶか、ということではなく、社運をかけた太陽電池製造装置ビジネスを行うかどうかという、会社の事業方針を決めることに他ならない」と論点をすり替える。

運命の投票へ

会社提案の5名と、候補を異なる修正案とがぶつかり、なんと「のべ6名の候補個別に信任・不信任の投票を行い、得票数の多かった方から5名を取締役とする」との議事方針となった。結果、6名全員が過半数の得票を得ることとなり、最小数だった茂木取締役は過半数の得票を得たにもかかわらず取締役に就任できないことに。(これは決議無効となる旨、後ほど解説があった。)
その後行われた取締役会で、新体制は緒方氏が社長に復帰という意外な結末を迎えた。

今回のMIP

太陽電機社の社長役を務めた大森氏に決定。

第1回演習「製品事故と企業対応」(Case No.109 2nd Ed)

2011年7月30日 於:日本外国人特派員協会会議室

ある日銀座の高松屋デパートで、オリオン社製のサンダルを履いた5歳の男の子がサンダルがエスカレーターに巻き込まれ、右足中指骨折・指3本の爪が剥がれる大怪我を負った。事故の一報を受けたオリオン社・高松屋では対策会議が開かれる。
実はオリオン社の主力商品である同型サンダルによる同様な事故は本件だけではなかったが、社長によってひた隠しにされて来ていたため幹部もほとんどが知らなかった。そこにマスコミや官庁から取材や事情説明の依頼が入り、広報部は記者会見を90分後に開くことを約束させられていた。
一方の高松屋では「老舗の百貨店」としての体面を保つべく、高松屋側に責任がないことを表明するための記者会見の準備が進行する。事故原因は製品の欠陥であるとの観測が強まる中、エスカレーターにおける安全喚起の表示が植栽に遮られて不十分であったことも判明した。

課題)オリオン、高松屋のグループごとに、ポジションペーパー・リリース・記者会見用Q&Aを作成し(90分)、約30分間の記者会見を行うこと。

塾長から「中島塾」のルール説明。くじ引きで割り振られた役割でシミュレーション開始。

高松屋チーム
オリオンチームの記者会見。情報量が不足・会社のポジションが明確でなく、記者からは厳しい質問が続く。

今回のMIP:高松屋社長役、終始落ち着いて丁寧かつ適切に記者会見をこなした、伊藤司氏