第6回演習 企業イノベーションと特定秘密保護法(Case No.117)

2013年2月22日 於:日本外国人特派員協会会議室

概要

2013 年 12 月 6 日に成立した「特定秘密保護法」は、「国民の知る権利」という側面がマスコミよってクローズアップされているが、情報の主体が企業であるか官公庁であるかによって差はない。技術開発型の企業が官公庁からの受注を企図する場合を想定し、同法の企業経営に与える影響を考察する。

課題

1)レポート作成
「国として防衛関連技術開発を委託する際、委託先企業に求める情報防衛体制」という題名で、官庁側からの視点で事前レポートを作成する。主として以下の4つの観点が提示された。
1.法的マネジメント
特定秘密保護法(以下「特秘法」)5条4項に規定される「適合事業者」となるために必要な「政令で定める基準」を策定する場合、企業に整備させるべき法的マネジメント体制の概要
2.物的マネジメント
特秘法における「適合事業者」となるために必要な「政令で定める基準」を策定する場合、企業に整備させるべき物的マネジメント体制の概要
3.人的マネジメント
特秘法における「適合事業者」において特定秘密を取り扱う「従業者」となる者が特定秘 密を漏らすおそれのないことを評価する「適正評価」を行う際に、適合事業者、従業者か ら情報提供を求めるべき事項について、特秘法12条2項に列挙される事項をもとに、さら に具体的に列挙、注記など記載した「適正評価調査書」を作成
4.受託企業のメリット

2)演習
演習当日は、セラミックス複合材料について有力な特許とノウハウを有する株式会社NJK技研が、国防省から共同研究開発の打診を受け、その諾否を検討するために「適合事業者」としての適正性について自主審査を行い、同社の経営諮問委員会への答申を行う。

こんなことまで問題になるのか。。。

社長は何としても応諾したいのだが。。。出席OBが経営諮問委員となって質疑が続く。国防省との共同開発を是非とも受諾したい社長だが、個別の適正性を検討して行くと、次から次へとマイナス要素が明らかになる。対象従業員の借金問題、競合会社からのスカウト、研究開発部内でのパワハラ、社内不倫・・・。

今回のMIP

論文の部MIP 高田氏演習の部MIP 伊東氏バランス感覚に秀でた経営企画担当取締役の伊東氏が演習の部のMIPに。秀逸な事前レポートを作成した高田氏が論文の部MIP。

第5回演習 コンプライアンスと実践(Case No.97-5th Ed.)

2013年1月18日 於:日本外国人特派員協会会議室

概要

バス会社が運転手が無免許状態であったことと、他の運転手を「替玉」に使って隠蔽しようとしていたことが、内部からの告発文書により発覚。会社はどのように対応するのか・・・。
モデルとなるのは、2003年の通称「名鉄バス無免許隠蔽事件」。免許更新を行っていなかった営業所の路線バス運転手が運行中に市内で追突事故に遭った。運行主任は直後に無免許を知らされたが運転を続けるよう指示。その後、別の運転手に県警の事情聴取を受けさせた。「替え玉事件」をめぐり同営業所の5人が逮捕・起訴され、無免許運転続行の事実を隠すために虚偽報告した新たな容疑で当時の本社部長と営業所長も逮捕された、という事件。
これをベースにしながら、鉄道事業担当副社長とバス事業担当副社長との社内的な確執や、無免許運転の当事者と「替え玉」を請け負った運転手との背景事情など、立体的かつリアルなケーススタディ。

課題

1月18日に「告発書」に対する対応を決定するための取締役会を行う。
当該営業所の関係者は隣室で待機。いつ、誰から事情聴取を行うかは取締役会の判断。

取締役会、スタート

取締役4名別室待機の岡崎営業所員バス事業担当副社長を除く役員で構成された「制裁委員会」がスタートし、個別のヒアリングが順番に行われた。
引き続き行われた取締役会は、開き直ったバス担当副社長の剣幕に押され気味で、社長以下経営陣は副社長を詰め切ることが出来なかった。

今回のMIP

淡々と社長役をこなしきった岡崎氏と、開き直りのバス担当副社長を熱演したOBの鈴木氏

第4回演習 株主総会の意義を考える(Case No.116)

2013年11月30日 於:日本外国人特派員協会会議室

概要

会社法の立法を担当する政府部内において、次のような「方向性」で会社法を改正する、との動きがある。「現代の定時株主総会は、議決権行使書面などにより、予め結論は決まっている。とすれば、株主を含め関係者らが一堂に会して審議するのは無意味だから、定時株主総会開催の一定期間前までに議決権行使書面などを提出してもらい、採決を行う。つまり定時株主総会は開催することを要せず、書面決議としてよいかを検討したい」という動きである。
この改正の「方向性」について賛成すべきか、反対すべきか。

ねらい

討論過程で、コーポレート・ガバナンスとは何か、デュープロセスとは何か、80年代から現代に至る株主総会の変遷をどう受け止めるのか、資本主義社会にとって株主総会の持つ意義は何かなど、多岐、かつ会社法の本質に迫る論点をカバーする。

反対派勝利!

移行賛成派グループ移行反対派グループ

今回のMIP

秀逸なプレゼンテーション力、伊東氏に決定。

第3回演習 株主総会と企業ガバナンス〜総会は企業を変えられるか?〜(Case No.112-4th Ed.)

2013年10月26-27日 於:アイセミナーハウス

概要

東証2部上場の太陽電気は電気部品の専業メーカー。1945年設立・資本金22億円・従業員160名・売上60億ほどの規模で、昨今は業績が低迷している。2012年3月、大量保有報告書により2007年設立のニコラ電子が30%の大株主になっていたことが判明、2012年10月の定時株主総会では会社提案の取締役承認議案が否決され、ニコラ電子の佐渡・伊東が取締役として承認される修正議案が成立、創業家三代目の山根社長はその座を追われた。ニコラ電子出身の取締役たちは、ニコラ電子と太陽電池製造装置の共同開発を行うために巨額の出金を目論むが。。。
太陽電気はニコラ電子による乗っ取りから会社を守ることができるのか、監査役はどう動くのか、前社長の山根は・・・。
課題)
10月26日に太陽電気社の定時株主総会を行う。議案については、事業報告と計算書類の報告、剰余金配当の件は省略し、「取締役4名全員任期満了につき4名選任の件」のみとする。

株主総会直前に、隣接会場で山根前社長の株主説明会が開催される

山根前社長の株主説明会に引き続き、太陽電機の株主総会が開催された。直前に出版された「大手町経済ニュース」のスクープ記事を心配する株主の声もあったが、30%を保有するニコラ側と20%を有する山根前社長が手を結び、ニコラ電子を内部に取り込む新体制案が可決された。

第2回演習 取締役の責任ー事業展開と取締役の忠実義務ー(Case No.3 22nd Ed.)

2013年9月6日 於:日本外国人特派員協会会議室

中島塾伝統のケース

取締役の競業避止義務違反が裁判で争われた「山崎製パン事件」を母体にした、戦略法務講座中島塾で最も著名なケーススタディ。1期から今期23期まで全期において取り上げられているため、卒業生含めて全員が共通体験を有することとなり、中島塾受講者の一体感醸成に効果を発揮している。

概要

第二次世界大戦後の動乱期に、文字通り裸一貫独力で市川製パン社を創業し、事業拡大をして来た現社長の高沢。ワンマン経営者で、社内の反対にもかかわらず千葉市の川口パンを個人で買収り、関西進出も個人でリスクをとって強引に進めていった。
小麦粉を納入していた東洋製粉社は、高沢が病魔に倒れたときに取締役の派遣を依頼されたことを契機に市川製パン社の系列化を画策する。纐纈社長の実弟である副社長との確執も利用し、突然纐纈社長の過去の独断経営行為を会社法違反に該当するとの問題提起から戦いの幕は開いた。

課題)
時代を昭和51年と仮定して、9月6日の予定で臨時取締役会を開催する。議題は社長の法的責任の究明と措置の決定である。ただし、法律は全て現行会社法など(平成25年9月現在)を適用するものとし、過去も同様の法律が施行されていたものと設定する。

これまでの中島塾史上最も激動の「山パン」が始まった

演習がスタートして間もない7月末、創業社長の高沢氏が山根監査役に辞任届を提出し、突然取締役を辞任。すみやかに辞任登記がなされ、臨時取締役会が開催されて妹の岩崎代表取締役副社長が代表取締役社長に就任する。
ところが、高沢元社長は「辞意表明は一時の気の迷い。辞めるの止めた」と次の定時株主総会で取締役及び社長への返り咲きを宣言し、株主・銀行・取引先などを訪問し、精力的に活動を開始する。
高沢元社長の動向を抑え切れない現経営陣。そうするうちに岩崎新社長が病に倒れ長期入院のために辞任することに。
一ヶ月間で二度に渡る代表取締役社長の辞任・交代。臨時取締役会が開かれ、新たに社長には東洋製粉出身の岡崎氏が、副社長には市川製パンプロパーで財務出身の高田氏が就任した。
従業員、パンストア会、株主、銀行、取引先・・・ステークホルダーたちが注目する取締役会がスタートする。

「当事者であるワシを抜きに何の話をするのだ」「ならば会場を変更する」

臨時取締役会は、当初予定された高沢元社長の自宅から市川製パン社の会社会議室に場所を変更して行われた。そこに高沢元社長が現れ、取締役会への参加と発言を求める。
「ここはワシの会社だ」「お前たちが反対するからワシが一人でリスクをとって会社を大きくして来た」「ワシの行為が違法だというなら、ワシ抜きで何の話をしようと言うのか」と憤りをあらわにする高沢元社長。
一方、「取締役を辞任したあなたに出席する権利は無い」「誰が出席すべきかは取締役会で決める」と主張する現経営陣。
「話をさせろ」「出て行ってくれ」水掛け論が続いた後、現経営陣は取締役会の会場を別の場所に移すことを決め、退席した。

記者会見

会議室に一人残った高沢元社長は、記者クラブに「30分後の15時から記者会見を行いたい」と電話で申し入れ、馴染みの記者たちが多数参集した。
15時30分から記者会見を予定していた会社側は驚く。「会社では予定していない」「高沢氏は現在は取締役ではないので、会議室は使わせられない」と頑な現経営陣。一方で記者からは「創業者で大株主なのに、なんて扱いだ」と小競り合いがあり、会社の軒先で高沢氏の会見を行った後、会議室で会社側の会見を行うことに。

高沢氏からはこれまでの経緯と、自身が来年の株主総会で復帰するとの表明がなされ、その後は取締役人事も含めて大改革を行うと宣言。

それに続いた会社側の会見は、記者たちの興味関心をはぐらかすかのように新商品「ダブルソフト」の開発・商品化の発表を行うので、記者たちから不満が噴出。今後の経営体制や方向性などについては確たる情報が得られないままに会見は終了した。

今回のMIP

海外出張でほとんど寝ていない状態ながら、創業社長を見事に貫いた高沢氏。

第1回演習 非常時のリスク対応(Case No.114 2nd Ed.)

2013年7月20日 於:日本外国人特派員協会会議室

概要

日比谷食品株式会社は東証一部上場で、調味料・冷凍食品・健康食品まで幅広く食品の製造販売事業を展開している。人気商品は「まるまる餃子」「まるまるシューマイ」「まるまる中華まん」で、これらの製造は全て100%子会社の「多摩川食品株式会社」に委託していて、商品は「製造元:多摩川食品 販売元:日比谷食品」という表示にて販売されている。
7月20日午前10時、製造本部長宛に食品事故と思われる報告が上がって来た。チェーンストア・フレッシュフーズ日比谷店で、前日に「まるまる餃子」を購入して食した客の子供が呼吸困難となり救急車で搬送された、母親によれば当該子供は卵アレルギーを持っておりその症状ではないかと思われる、というもの。
日比谷食品から多摩川食品の幹部にも情報は伝わったが。。。

課題)
・緊急対策会議を行い、必要な情報収集とポジションペーパーとリリースを作成、記者会見を行う。

精緻なケーススタディをロールプレイングで仮想体験する「中島メソッド」、スタート

多摩川食品チーム日比谷食品チーム8名の受講生には、それぞれ個別の役割・ミッションと情報が設定されているので、まずは与えられた個別の資料を読み込むことから始まる。自分自身の戦略目標と組織の戦略目標を設定しながら、それを達成するための戦術を検討していく。
日比谷食品チームは、代表取締役社長・取締役営業本部長・取締役製造本部長・取締役広報部長・取締役法務部長の5名、多摩川食品チームは代表取締役社長(日比谷食品から3年前に転籍)・取締役製造部長(日比谷食品から1年前に転籍)・非常勤取締役(日比谷食品営業本部担当者兼務)の3名。

緊急対策会議で情報収集開始

子会社の多摩川食品幹部も親会社の日比谷食品に合流し、一緒に状況把握と対策検討開始。効率良い情報収集と分析はハードルが高い。
ここでは、親会社と子会社という立場と力関係、特に多摩川食品の幹部社員の個人的な背景事情など、対策構築にも微妙な温度差を生じさせる「仕掛け」が施されていたのだが、それらを反映するところまでは至らず。

記者会見

開始予定時間になっても始まらない、リリースの配布も間に合わない、といった不手際を指摘され、緊張感も高まる。「17日以前の製品が安全だと何故言い切れるのか」「原因が特定できていないということは、さらに新たな被害も発生するのでは」・・・記者とOBから厳しい質問の連続。

今回のMIP

歯切れの良い回答で記者会見をコントロールした、伊東氏に決定。